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セミナー中江兆民とフランス共和主義

日時: 2020年2月1日(土)15:00~17:30
場所: 日仏会館601号室
発表者: エディ・デュフルモン(ボルドー・モンテーニュ大学准教授)
使用言語: フランス語(日本語同時通訳付き)
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アジアにおける国際的思想交流のアクターとして中江兆民を再考する:兆民のリベラル社会主義の思想形成と知的戦略におけるフランス共和主義の知られざる位置

中江兆民(1847~1901)は明治を代表する思想家のひとり、その著作は日本だけでなく中国や他の国々で読まれ研究されているが、それは「東洋のルソー」こと兆民がアジアにおける民主主義の誕生に貢献したことによる。しかし兆民の思想形成におけるフランス語文献の役割については十分研究されておらず、そのため兆民は比較思想史のなかに位置づけられているとは言いがたい。この方面での研究の先駆者は井田進也と宮村治雄で、井田は雑誌『欧米政理叢談』の存在を明らかにし、宮村は『理学鉤玄』にフランス語の文献が紹介されていることを示した。これらの資料にある翻訳を分析すると、その目的がフランス共和主義者たちの言説の普及にあることがわかる。兆民の翻訳の仕事はひとりルソーだけにはとどまらないのである。
兆民が翻訳紹介したのは、エミール・アコラス、ジュール・バルニ、アルフレッド・フイエ、ウジェーヌ・ヴェロン、ジュール・シモン、シャルル・ルヌーヴィエ、アルフレッド・ナケ、エティエンヌ・ヴァシュロで、彼らはみなフランス第三共和政の成立に重要な役割を果たした共和主義者であり、共和国の理念とライシテ(政教分離)のための政治参加を通して、兆民のリベラル社会主義思想に結びつく。兆民の日本型リベラル社会主義の構想には批判的ルソー読解が大きな役割をはたした。フランス共和主義に着目することは、兆民の思想形成をよりグローバルに解釈することを助け、アジアにおける民主主義思想の広がりを理解するための文化伝播モデルとして有効である。本講演では、兆民の翻訳の仕事そのものより、フランスで近年再評価されつつあるこれら共和主義者たちについて検討する。


言語:フランス語(日本語通訳付き)

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