2016.03.14

サマープログラム

執筆者:園田茂人教授(東洋文化研究所&東京大学大学院情報学環・学際情報学府)

 この夏、国際総合日本学研究ネットワークが満を持して、日本学に関わるサマープログラムを実施する。内容については現在詰めている最中で、詳細を紹介することはできないが、すでに事務サイドでの会合を頻繁にもち、どのような学生を相手に、どのようなプログラムを提供するのか、そのためのPRをどうやって行うのかなど、必要な議論を行っている。
 私見では、プログラム実施にあたっての要諦は3つある。

 第一に、魅力的な講義が、魅力的なテーマのもとに配置されていること。
 学生の中には「東大を見てみたい」といった動機で参加する者もいるだろうが、海を越えてやってきた学生諸君を動かすのは、なんといってもプログラムのテーマ・内容であり、個々の教員の迫力ある講義である。
 日本に来てよかった、東京大学に来てよかったと思う講義が提供されなければ、学生は失望する。それだけ講師のラインアップは重要なのだが、これも魅力的なテーマがあってこそ。包括的でありながら、それでいて凝集性があり、参加したいと思わせるテーマがあって、初めて教員の個性が活きる。今年は「日本の戦後を考える (An Inquiry into Japan’s Postwar)」というテーマを設定しており、現在、出講依頼を行っているところだ。

 第二に、講義に関連する魅力的な活動がちりばめられていること。
 通常の授業と異なり、サマープログラムは単位取得に伴う時間的制約がない。講義で学んだことを実際の現場に赴き、当事者から話を聞いたり、その後の変化を検証しに行ったりといった活動も自由にできる。いや、講義とフィールドトリップや課外活動との結びつきこそサマープログラムの肝であるといっても過言でない。
 筆者は今まで、香港大学や台湾大学、北京大学、ソウル大学と協力して合同サマープログラムを運営してきた経験を持つが、参加学生の多くは課外活動に強く印象付けられる。2年前の台湾大学との合同サマープログラムに参加し、現在NHKに勤務している者が、プログラム参加者が作っているFacebookのコミュニティに最近、「台湾の総統選挙で注目されている(新しい党「時代力量」の主席である)黄國昌さんって、サマープログラムで話をしてくれた、あの黄さん?」と書き込みをしたが、それだけ黄國昌氏の話が強烈だったのだろう。
 政治を座学としてだけでなく、政治家の発言から感得する。都市計画を理念からだけでなく、実際の景観から感じ取る。企業経営を理念化されたモデルとしてだけでなく、辛酸をなめた経営者の話から理解する。フィールドトリップや課外活動には、こうした学びの醍醐味があり、プログラムの成否は、まさにそこの設計にかかっている。

 そして第三に、学生が学んだことを反芻しつつ、自分たちがもっと知りたいと思うことをグループワークで深堀をし、その成果を報告できる機会があること。
 これは2013年に香港大学との合同サマープログラムを実施して初めて実感したことだが、与えられたメニューだけをこなすのでは、学生は満足しない。より正確にいえば、プログラムに参加した者が、十分にメニューをこなした上で喧々諤々の議論をし、より深めたいテーマを定めた上で、これを明らかにするためのリサーチを行い、これをもとにグループで成果報告をすることで、学生はより大きな達成感を味わうことになる。
 こうして得られた達成感は、その後もしばらく持続する。濃密な10日間を経験した学生同士に連帯感が生まれ、言語・文化の壁を越えてコミュニケーションを行うようになる。

 以上3つの条件が重なった時、プログラムは生命を吹き込まれ、学生たちは生き生きとする。学生が生き生きとすれば、講義した教員も報われ、フィールドトリップを受け入れた方々も、また学生を受け入れたいと思うようになる。
 逆にいえば、それだけ手をかけないといいサマープログラムにはならないというわけだが、こうしたプログラムを作ることによるメリットは何か。そうすることで何か研究上の収穫はあるのかと問われると、体調が良い時には「ある」、体調が悪いときには「ない」と答えることにしている。
 その理由については、……次回のエッセーで説明したい。