第18回GJS講演会もう一つの 「歴史のための弁明」:東アジア相互嫌悪感情と帝国談論に向かい合う
日時: | 2017年2月4日(土), 13:30~15:30 |
---|---|
会場: | 東京大学東洋文化研究所 第一会議室(3階) |
講演者: | 白永瑞(延世大学教授) |
使用言語: | 日本語と韓国語(韓国語には日本語通訳あり) |
発表概要: 人文学が果たして有用なものであるのかに関する質問をめぐる論争が、様々な社会から提起されているが、発表者は人文学の有用性というものは存在すると考えており、それを積極的に説明する責任を感じている。現実に批評的に介入する方式として社会のアクチュアルなイシューを学術議題とし、その学術議題が社会問題を見直す認識の枠組みを提示することにおいて、歴史学の有用性が現われると期待している。その事例の一つとして、東アジアの各社会に澎湃たる相互嫌悪感情というイシューに注目する。 日淸戰爭以来、東アジアにおいて造成された歴史感覚と認識論的分断構造が、時期別に地政学的な緊張や政治社会体制の異質性と結合する様相が変化するにつれてリズミカルに変奏されてきた。その過程で相互嫌悪感情とその背景である中国をみる視角も屈折を表してきた。 一九九〇年代以来、東アジア分断構造は解体の段階に進入したが、未だその代案が落ち着いてない状態の中、最近は「新冷戦」が論じられる程の危機状況に直面し相互嫌悪感情が煽られている。東アジアにおいて相互嫌悪感情を刺激する要因の中の一つである「中国要素」に重点を置きつつも、それを観る上で作動するフレームである帝国論述の文脈・過程及び韓国・台湾・日本での発現の差異を構造的に認識すること、そしてその認識を通して相互嫌悪感情を歴史化・相対化することこそが、歴史学の方法論的特徴を活かしつつ、現実に批評的に介入して歴史学の有用性を説明できる道であると考える。 その作業を遂行することによって、歴史学者自身が営為する日常生活の現場に対する自己批判的な省察も可能になるであろう。
主催:東京大学国際総合日本学ネットワーク(GJS)共催:東京大学東洋文化研究所(IASA)、日本・アジアに関する教育研究ネットワーク(ASNET)
問い合わせ:gjs[at]ioc.u-tokyo.ac.jp