第18回GJS講演会(東文研・ASNET共催)を開催しました

2017.02.06
タイトル: もう一つの 「歴史のための弁明」:東アジア相互嫌悪感情と帝国談論に向かい合う
講演者: 白永瑞(延世大学教授)
日時: 2017年2月4日(土)13:30~15:30
会場: 東京大学東洋文化研究所 第一会議室(3階)
使用言語: 日本語と韓国語

GJS講演会の報告

 2017年2月4日、白永瑞・延世大学教授をお招きして、第18回GJS特別講演会が開催されました。その内容は、法政大学出版会から出された近著に即して、人文学が現実に批評的に介入する方式は、社会問題を見直す認識の枠組みを提示することにある、という一つの方向性を提示するものでした。
具体的な事例として、白先生は東アジアの各社会に広がる相互嫌悪感情を、その背後にある日淸戰爭以来の東アジアにおける歴史感覚と認識論的分断構造、それが一九九〇年代以来、解体する段階において、その代案となる構造を見出せないという段階にさかのぼって説明されました。東アジアにおいて相互嫌悪感情を刺激する要因の中の一つである「中国要素」に重点を置きつつも、それを観る上で作動する帝国ディスコースの、韓国・台湾・日本における現れかたの差異を構造的に認識すること、その認識を通して相互嫌悪感情を歴史化・相対化することこそが、歴史学が現実に批評的に介入する道であり、その作業を遂行することによって、歴史学者自身が営為する日常生活の現場に対する自己批判的な省察も可能になるであろう、という結論を提示されました。
当日は多くの方々が来場され、難解かつ今日的な講演テーマへの関心の高さをうかがわせる活発な議論が行われました。

当日の様子