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第20回GJSセミナー帝国的エトス、植民地的パトス:
情動リアリズムとトランス・コロニアル映画合作の限界

日時: 2016年4月28日(木)17:00~18:00
会場: 東京大学東洋文化研究所 第一会議室(3階)
発表者: 孫イレ(ミシガン大学 アジア言語文化学部 博士課程)
使用言語: 英語
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発表概要: 本発表は、日本帝国末期の朝鮮映画における植民地的情動の否認と再想像を扱う。特に、本発表は『旅路』(1937)、『福地万里』(1941)など、日本の映画人や映画会社との合作として制作された植民地朝鮮の映画に現れる<憂鬱なムード>に関する言説を分析する。植民地の映画人にとって朝鮮映画の憂鬱さというのは、日本帝国のもっと幅広い観客層を確保するために必ず克服されるべき問題であった。そのために当時彼らが求めていたのはより希望的な様式としての「明朗さ」だった。「明朗さ」は、単なる観客層の拡大のための戦略ではなく、朝鮮映画をより望ましくより協和的にさせるもの、つまり「帝国のエトス」であったのだ。ところが、林和(イム・ファ)をはじめとした一部の論者たちは、朝鮮映画の憂鬱なムードに体現されていた「植民地のパトス」が、明朗な表象の下で結局は隠蔽されてしまうのではないかということを恐れていた。林にとって、朝鮮映画の単独性(singularity)は、パトスに満ちる表情、風景、そして物語によってこそ回復されるものであったからだ。本発表は、このような帝国のエトスと植民地のパトスとのせめぎ合いに注目しながら、皇民化の過剰としての情動とその植民地的情動の体現としての情動的リアリズムの理論化を模索する。

主催:東京大学国際総合日本学ネットワーク(GJS)
共催:東京大学東洋文化研究所
問い合わせ:gjs[at]ioc.u-tokyo.ac.jp