2015.11.24

自由な研究活動と単位化された授業の間(2)

執筆者:園田茂人(東洋文化研究所&東京大学大学院情報学環・学際情報学府)

 さて、その解決方法だが、あらかじめ各種イベントを事前に設定・調整し、特定の時間帯にセットしつつ、それ以外にアドホックに設定されるセミナー・ワークショップなどを組み合わせ、一つのパッケージを作る。そして、これを事前に授業として開講できるよう学生に周知しておき(しかも単位認定の方法を事前に定め)、学生の目に届きやすいよう工夫する、というものだ。
 もっとも、この方法の最大の困難が、特定の時間帯に各種イベントをセットすることがむずかしいといった点にあることは、容易に想像がつくだろう。ふらっと日本を訪れた海外の研究者を捕まえられたとしても、その特定の時間帯にイベントをセットできるかどうかは交渉次第。面倒なスピーチなどしたくないと思う研究者もいるだろう。
 他方で、こちらでオムニバス形式を最初から設定するには潤沢な資金が必要となる。こちらが交通費や滞在費、謝金などをすべてカバーできるだけの資金をもっていれば、特定の時間帯に継続的にセミナー・ワークショップを実施することはできるが、それでも交渉コストはかかる。こうした交渉を行うスタッフがいないことには、パッケージを作ることはむずかしい。
 国際総合日本学の予算では、最初からオムニバス形式で十数回のイベントを打つほどの余裕はない。他方で、東洋文化研究所の中に交渉担当のスタッフはいるから、彼・彼女が動き回り、うまく情報を集めてパッケージ化することは可能だ。あとはこれを授業として展開できるよう、教育担当部局と調整・協議すればよいのだが、これも本学にあってはむずかしい課題だ。研究活動を束ねる東洋文化研究所は、単位付与を伴う教育プログラムを提供することができないからだ。
 結局、どう考えてもイロイロな困難はついて回るのだが、幸いなことに、以上の提案は、本学の国際本部が管轄する国際総合日本学・教育部門会議で議論され、認められることになった。あとはどのようにパッケージ化し、単位化のための作業を進めるか、だ。
 この間、11月12日から15日まで、カリフォルニア大学バークレー校を訪問する機会があったが、同校でも、このエッセーが問題にしている構造は存在している。同校には日本研究センター(Center for Japanese Studies)があり活発に活動をしているものの、センターに所属していない教員が行う日本研究関係のイベントもある。他方でセンターの活動は学部とはほとんど連動しておらず、学部学生の動員がむずかしい状況にあるとのことだった。
 それでも研究者が研究資金を獲得し、日本と海外との間を行き来することになれば、共同研究や共同教育の可能性が生まれる。研究成果を報告する機会が増えれば、これを束ねて日本研究の成果として学生に提示することもでき、これが本学学生の日本研究への関心を高めることに繋がるはずだ。そうなれば「豊作貧乏」に悩むこともなくなるだろう。
 世の中、うまい話などない。研究者のネットワークを着実に作り上げ、地道に作業を進めながら、自由な研究活動と単位化された授業の間の「矛盾」を乗り越えていくしかないと思う、今日この頃である。