2016.05.09

Gregory W. Noble教授(社会科学研究所)へのインタビュー

インタビュアー:鍾 以江(東洋文化研究所)

Gregory W. Noble教授(社会科学研究所)

一つ目に、先生のご研究分野から見て、東大の日本研究の現状はいかがですか。

 (ISS、または社研として知られる)東京大学社会科学研究所で働く政治学者として、東大の状況はとてもいいと思います。社研は、働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査や、日本版総合的社会調査などの大規模な調査を実施し、保管記録している、附属社会調査・データアーカイブ研究センターの母体組織です。このセンターは、ミシガン大学に本部を置く、権威ある、政治・調査のための大学協会(ICPSR)の日本のハブ組織です。社研はまた、日本関連の研究課題を扱う一連の外国人研究者を受け入れ、プリンストン大学、カリフォルニア大学バークレー校、ベルリン自由大学を含む一流機関の教員との交流を定期的に実施し、私が編集長を務めている、SSCIに登録されている学際的な雑誌、Social Science Japan Journalと、年2回発行のSocial Japan Newsletterを編集しています。さらに、私が招集者である、Contemporary Japan Groupという英語での講義のシリーズと、私とKenneth McElwain教授が招集者である、「PhD研究会」という若い研究者たちの英語での月例研究会を後援しています。社研以外では、東大法学部の谷口将紀教授が、有権者と国会議員候補者を対象とする、有力な朝日・東大共同調査を行い、一方、法学部の川人貞史教授は、東京大学出版会から現在発行されている、全11巻の新しい「シリーズ日本の政治」の編集者です。社研を含む東大は、日本の政治学と社会学を研究する国内外の研究者にとって、代表的なコンタクト・ポイントであると言っていいと思います。

二つ目に、海外での日本研究と日本での日本研究の違いと類似点をどのようにご覧になりますか。

 多くの点で、その二つはまとまりつつあります。日本の学者たちは国際的な研究のトレンドに細心の注意を払う傾向があり、少なくとも東大やほかの主要な日本の大学では、研究者たちは英語の国際誌にますます精力的に発表しています。逆に海外の学者たちは、フィールドワークを行うために、東大やほかの主要な日本の大学を頻繁に来ています。残念ながら、たとえば中国の台頭や中東の混乱など注目を集めるトピックと比較して、海外での日本研究は、地域研究を重要視しなくなっている一般的な傾向と、日本への興味が薄れてきていることに圧迫され、やや縮小しつつあるというのも事実です。外国人の学者はまた、日本語で出版された、急速に拡大する高水準な社会科学研究についていくことに、ますます苦労しています。このため、海外の読者が日本の学術トレンドにより追いつきやすくなるよう、SSJJで私たちは日本での様々なタイムリーな議論や論点、データソースを紹介する「サーヴェイ論文」、および、通常一部あるいはすべてが日本語で出版された本を3冊以上紹介する「書評論文」を発表することに、熱心に取り組んでいます。

三つ目に、海外の学者たちと日本の学者たちを結びつけることができるような、国際的な日本研究の促進のためにアドバイスをいただけますか。

 社研や東洋文化研究所や、その他の東大の研究機関はすでに、ネットワーキング・ツールの開発を含む、国際的なコンタクトを維持し拡大するために活発に活動していると思います。個人的なコンタクトが依然として非常に重要ではありますが、もっと多くの研究者、とりわけアジアの研究者の方には、ここ東京で長期間のフィールドワークを行ない、より活発に講義および研究活動に参加してもらえることを期待します。